従者の1

王立騎士団の若手騎士クロアトは、騎士である前にフィオドルニアの従者でもある。騎士団内ではあくまで歳の近い友人として振る舞っているが、二人の間には絶対的な主従関係がある。

従者の2

彼には幼い妹がいたが、10年前の雪の日に聖女として王宮に連れて行かれてしまった。唯一の生きがいを失ってボロ布のように路地に転がっていた彼を救った者こそ、幼き日のフィオドルニアだった。

従者の3

幼い主は頓狂な野望をよく口にした。「聖女は本当はこの国のものじゃない。だから僕が神話に出てくる王国を作ってそこに招くんだ」壮大な話過ぎて従者にはよく分からなかったが、主には夢物語も現実にしそうな不思議な魅力があった。主と共に妹を取り戻し新しい国で暮らす。そんな夢を彼も抱くようになった。

従者の4

夢の実現の為にまず主に剣を教えた。生きる為になんでもして来た彼が教えられるのは騎士が振るうようなお上品な剣ではなく、確実に人を殺すための技術だったが、主は「むしろ、ちょうどいいよ」と笑った。

従者の5

頼れる従者として、身の回りの全てをこなす執事として、同じ夢を語り合う友人として、後ろ暗い奸計の共犯者として。従者は主と共に過ごす日々を積み重ねながら、その絆を深めていった。

従者の6

騎士団に入団したことで、侍女を介して聖女と手紙のやりとりができるようになった。兄は妹の身を案じてあれやこれやと質問を書き連ねたが、返事は常に他愛ない話が綴られ、最後は必ず「いつもありがとう」と締め括られていた。